読み解く鍵は、まず「なぜ圧倒的にAMよりFMの方が音声がよく感じるのか」である。
AM放送に比べてFM放送の方が圧倒的に音が良く感じるのには、決して気のせいではなく、電波の性質、変調方式、そして送れる音の幅(帯域幅)という明確な技術的理由がある。
大きく分けて以下の3つの理由がある。
. ノイズの強さが違う(変調方式の違い)
AMとFMは、電波に音の信号を乗せる「変調」のやり方が根本的に異なる。
- AM(Amplitude Modulation:振幅変調)
- 音の強弱を「電波の強さ(振幅)」に変えて送る方式。
- 落雷、自動車のエンジン、電化製品、マンションの鉄筋などから出る雑音(ノイズ)も、電波の強さを乱す性質を持っている。そのため、AMはノイズが音に直接混ざりやすく、「ジー」「プチプチ」といった雑音が多くなりがちである。
- AMに使われる電波(中波)は波長が長く、地球の電離層と地面の間を反射しながら進むことができるため、1つの送信所から数百キロ離れた場所や、山を越えた県外まで電波を届けることが可能である。
- 音の強弱を「電波の強さ(振幅)」に変えて送る方式。
- FM(Frequency Modulation:周波数変調)
- 音の強弱を「電波の周波数(細かな揺れ)」に変えて送る方式。
- 電波の強さがノイズで多少乱れても、周波数の変化さえ読み取れれば音を綺麗に再現できるため、雑音に非常に強いという特徴がある。
- FMに使われる電波(超短波)は直進性が高く、光に近い性質を持っているめ、基本的には見通せる範囲(数十キロ程度)しか届かない。山を越えたり、地球の丸みの先へ行ったりすると、すぐに電波が途切れてしまう。
- 音の強弱を「電波の周波数(細かな揺れ)」に変えて送る方式。
2. 送れる「音の高さ」の範囲が違う(帯域幅の違い)
人間が耳で聞こえる音の範囲(可聴帯域)は、一般的に 20Hz 〜 20,000Hz(20kHz)と言われている。AMとFMでは、送れる音の高さの上限が全く違う。
| 放送方式 | 送れる高音の上限 | 音質の特徴 |
| AM放送 | 約 7.5kHz まで | 人の声の帯域(中音域)はしっかり聞こえるが、 音楽の彩り豊かな高音や、空気感がカットされるため、 こもった音に聞こえる。 |
| FM放送 | 約 15kHz まで | 人間の可聴帯域の大部分をカバーできる。 楽器の倍音やハイハットのような高音まで クリアに届くため、圧倒的に音質が良く聞こえる。 |
AMが「電話の音声」に近いとすれば、FMは「CDやデジタルオーディオ」に近い広がりのある音を届けることができる。
3. ステレオ放送である
多くのAM放送はモノラル(1つのスピーカー用)であるが、FM放送は基本的にステレオ(左右2つのチャンネル)で放送されている。
音が左右に広がって聞こえるため、空間の奥行きや臨場感が生まれ、人間の耳には「良い音」「心地よい音」として圧倒的な差になって感じられるのである。
まとめ
AM:とにかく遠くまで電波が届く。一方、ノイズに弱く高音がカットされている。
FM:建物などの障害物に弱く遠くまで届きにくい。一方、ノイズに強く高音まで入ったステレオ音響が届けられる。
つまり、「音は悪いがどこでも広く届くAM」と、「遠くには届かないが音は抜群に良いFM」という、完全に役割の異なる特徴を持っているのである。
音質の良いFMと音質の劣るAMだが、AMが今でも使われ続けているのは、遮蔽物の多い日本のような地形や都市部でも、比較的繋がりやすいという、FMにはない強みがあるからというのも確かである。また、最近では「ワイドFM(FM補完放送)」といって、FMの周波数を使ってAMラジオの番組を綺麗な音質で聴ける機能をもったラジオが主流となっている。
