今回は、「夏の風物詩」の代表的な50選と、それらを「誰が広めたのか(または定着させたのか)」のまとめである。
「夏の風物詩」という公式の50選が法令や公的機関で定められているわけではない。季節の文化や風習、江戸時代の庶民生活、昭和期の商業キャンペーンなどが重なり合い、時代のなかで自然と定着したものである。
分類ごとの一覧
食品・飲料 | 日用品・生活用品 | 植物・生き物・自然現象 | 行事・レジャー・エンタメ
食品・飲料(1〜15)
1. 花火
- 広めた人物・背景:徳川吉宗(8代将軍)
- 経緯:1733年、飢饉や疫病による死者の慰霊と悪霊退散を祈願し、隅田川で「両国の川開き」を開催した際に打ち上げたのが始まり。
2. かき氷
- 広めた人物・背景:清少納言 / 明治時代の製氷技術者
- 経緯:平安時代『枕草子』に貴族の高級品として記述がある。明治時代に天然氷の発送や人造氷の技術が普及し、庶民の夏の娯楽へと変化した。
3. 西瓜(スイカ)
- 広めた人物・背景:江戸時代の農民・商人
- 経緯:安土桃山〜江戸時代初期に伝来した。井戸水で冷やして手軽に水分と塩分を補給できる点から、庶民の夏を支える食べ物として広まった。
4. 麦茶
- 広めた人物・背景:江戸時代の「麦湯店(むぎゆてん)」
- 経緯:江戸時代後期に街頭の露店で「麦湯」を売る店が繁盛し、昭和時代に冷蔵庫が普及すると冷やして飲むスタイルが定着した。
5. そうめん(流しそうめん)
- 広めた人物・背景:奈良時代の遣唐使 / 昭和期の宮崎県高千穂町観光協会
- 経緯:奈良時代に伝わった「索餅」が原型。竹樋を使って冷水で流すスタイルは、1955年に高千穂峡の観光イベントとして考案された。
6. 水ようかん / 竹筒ようかん
- 広めた人物・背景:和菓子職人および冷蔵技術の普及
- 経緯:元来は江戸時代の冬の行事食(おせち料理の献立)であった。大正〜昭和に冷蔵技術が普及するにつれ、冷やして食べる夏定番の和菓子へと変化した。
7. ラムネ(サイダー)
- 広めた人物・背景:ペリー提督 / 明治の飲料業者
- 経緯:1853年にペリーが持ち込んだレモネード(Lemonade)が起源である。玉閉じガラス瓶の音と爽快感から、明治・大正期を通じて夏の定番となった。
8. 冷やし中華
- 広めた人物・背景:中華料理店「龍亭」(仙台市)
- 経緯:1937年、夏の売上低迷を打開するために創業者が考案した。「冷やし中華始めました」の貼り紙とともに全国へ拡大した。
9. 鰻の蒲焼(土用の丑の日)
- 広めた人物・背景:平賀源内(蘭学者・発明家)
- 経緯:江戸時代、夏場に売れ行きが落ちる鰻屋のために平賀源内が「本日土用の丑の日」という宣伝を出したことが由来とされる販促手法。
10. ビアガーデン
- 広めた人物・背景:横浜新道ビール園 / 各ビールメーカー
- 経緯:1950年代に横浜や大阪のビル屋上で本格展開され、高度経済成長期の都市部においてサラリーマンの憩いの場として急速に普及。
11. トマト・キュウリ(夏野菜の丸かじり)
- 広めた人物・背景:昭和の農家と家庭の冷蔵習慣
- 経緯:昭和の高度成長期に家庭用冷蔵庫や井戸水で冷やしてそのまま食べる習慣が広まり、夏の水分補給の象徴となった。
12. 鮎の塩焼き
- 広めた人物・背景:川魚の漁師・観光ヤナ
- 経緯:夏の解禁時期に合わせて清流で捕れる鮎を炭火で焼く食文化が、観光地や料亭を中心に「初夏の味覚」として定着した。
13. 心太(ところてん)
- 広めた人物・背景:奈良時代の朝廷 / 江戸の天秤棒商人
- 経緯:奈良時代にはすでに食されていました。江戸時代に「突く」道具が工夫され、冷やして酢醤油や蜜で食べる夏のファストフードとして販売された。
14. 枝豆
- 広めた人物・背景:江戸時代の農家と「枝豆売り」
- 経緯:江戸時代、枝がついたまま茹でて食べ歩くスタイルが販売され、夏場の手軽な間食や酒の肴として定着した。
15. かき氷のブルーハワイ
- 広めた人物・背景:昭和後期の喫茶店およびシロップメーカー
- 経緯:ハワイの同名カクテルをイメージし、昭和中期以降に子ども向けのかき氷シロップとして発売され、視覚的な涼しさから夏の定番色となった。
日用品・生活用品(16〜28)
16. 風鈴
- 広めた人物・背景:仏教の僧侶(古代中国より伝来)
- 経緯:寺院の四隅に吊るされた魔除けの「風鐸」が起源である。江戸時代中期以降、ガラス細工の普及に伴い涼を楽しむ道具となった。
17. 蚊取り線香
- 広めた人物・背景:上山英一郎(金鳥の創業者)
- 経緯:1890年に棒状を開発後、妻の発想を得て1902年に現在の渦巻き型を完成させ、長時間の防虫を可能にした。
18. 浴衣
- 広めた人物・背景:江戸時代の銭湯文化と庶民
- 経緯:貴族の蒸し風呂用の着衣(湯帷子)が起源。江戸時代に銭湯が普及すると、風呂上がりの夕涼み着として庶民へ浸透した。
19. うちわ(団扇)
- 広めた人物・背景:江戸時代の浮世絵師や職人
- 経緯:和紙と竹の加工技術が進化し大量生産が可能になった江戸時代、祭りや夕涼みの道具、役者絵などを刷った広告媒体として定着した。
20. 扇風機
- 広めた人物・背景:芝浦製作所(現在の東芝)
- 経緯:1894年に国産初の直流電気扇風機が開発され、昭和の高度経済成長期に一般家庭へ広く普及。
21. 氷旗(赤い「氷」の文字の旗)
- 広めた人物・背景:明治時代の政府(衛生管理)
- 経緯:1877年、政府が衛生基準をクリアした公認の氷氷店に与えた営業許可証(鑑札)が起源で、そのまま涼の目印として定着した。
22. 蚊帳(かや)
- 広めた人物・背景:近江商人
- 経緯:貴族の道具だったものを、江戸時代に近江商人が全国的な流通網を築いたことで庶民の夏の寝具として普及。
23. ござ・い草ラグ
- 広めた人物・背景:畳職人と日本の住環境
- 経緯:古代から使われていた畳技術を基に、江戸時代に持ち運び可能な「草聢(ござ)」として夕涼みやアウトドア用に普及。
24. 打ち水
- 広めた人物・背景:茶道の茶人 / 江戸の町衆
- 経緯:もとは茶の湯の礼儀(おもてなし)であったが、気化熱で周囲の気温を下げる実用的な知恵として江戸の町へ定着した。
25. 扇子
- 広めた人物・背景:平安時代の貴族 / 江戸の商人
- 経緯:日本発祥の折りたためる団扇として発展し、江戸時代に木綿や紙の普及に伴ってコンパクトな持ち運び用の涼具として定着した。
26. 竹ちくわ / 網戸
- 広めた人物・背景:昭和の建具メーカー
- 経緯:昭和30年代以降、アルミサッシの普及とともに網戸が標準装備され、風を通しながら虫を防ぐ現代住宅の夏必需品となった。
27. すだれ・よしず
- 広めた人物・背景:古代〜江戸時代の職人
- 経緯:日差しを遮りつつ風を通す遮光・採光の道具として、万葉集の時代から使われ、江戸時代に都市部の住環境へ定着。
28. ステテコ
- 広めた人物・背景:明治時代の和装職人 / アパレル企業
- 経緯:明治時代に着物の下着として考案され、汗を吸い取る男性用インナーとして定着。近年はクールビズ等で再評価された。
植物・生き物・自然現象(29〜38)
29. 朝顔
- 広めた人物・背景:植木鉢商人と江戸の愛好家
- 経緯:奈良時代に薬草として伝来後、江戸後期の文化・文政期に空前のブームが到来し、朝顔市とともに夏の観賞植物となった。
30. ひまわり(向日葵)
- 広めた人物・背景:全国自治体の休耕地活用
- 経緯:17世紀に渡来後、平成以降に全国の休耕地を利用した「ひまわり畑」が大規模整備され、夏のお出かけスポットとして定着した。
31. セミの鳴き声
- 広めた人物・背景:日本の気候風土と昭和のメディア演出
- 経緯:昭和期のラジオドラマやアニメ等で「夏の情景」を表す効果音として多用され、日本人の夏の象徴として意識付けられた。
32. ほたる(螢)
- 広めた人物・背景:平安貴族 / 現代の地域保全団体
- 経緯:古くは『万葉集』から詠まれ、夏の夜の幻想的な風景として定着。現在は各地の保護活動を通じて初夏の風物詩となっている。
33. カブトムシ・クワガタ採集
- 広めた人物・背景:昭和の少年向けメディアと百貨店
- 経緯:昭和30〜40年代、子ども向け雑誌の昆虫特集や屋上百貨店での販売を通じ、夏休みの虫捕り体験として定着した。
34. 入道雲(積乱雲)
- 広めた人物・背景:日本の気象条件および文芸・絵画作品
- 経緯:夏の強い日差しと湿気によって発生する自然現象で、歌謡曲やアニメーションの背景演出を通じて「夏の訪れ」の象徴となった。
35. ほおずき(鬼灯)
- 広めた人物・背景:浅草寺の「ほおずき市」
- 経緯:江戸時代、薬草として扱われていたほおずきを浅草寺の四万六千日の縁日で売るようになり、赤い実が夏を彩る飾りとして根付いた。
36. 蓮(ハス)の花
- 広めた人物・背景:仏教寺院と庭園文化
- 経緯:極楽浄土を象徴する花として寺院を中心に植えられ、早朝に開花する姿を鑑賞する「早朝観蓮会」などが夏の行事として定着した。
37. 夕立
- 広めた人物・背景:日本の太平洋側気候と俳句文化
- 経緯:夏の午後に発生する急な雷雨で、涼をもたらす自然現象として江戸時代の俳諧や浮世絵の題材となり定着した。
38. 金魚すくい
- 広めた人物・背景:江戸時代の金魚商人
- 経緯:江戸時代中期に金魚の養殖技術が確立され、お祭りや縁日の屋台で遊ぶ娯楽として考案された。
行事・レジャー・エンタメ(39〜50)
39. 盆踊り
- 広めた人物・背景:空也上人(踊り念仏の祖)/ 地域社会
- 経緯:平安時代に始まった「踊り念仏」がお盆の行事と融合し、先祖供養と地域の交流を兼ねた行事として全国へ広まった。
40. 甲子園(全国高校野球選手権大会)
- 広めた人物・背景:朝日新聞社および日本高等学校野球連盟
- 経緯:1915年に始まり、1924年の阪神甲子園球場完成とラジオ・テレビ中継を通じて国民的な夏行事となった。
41. 怪談・肝試し
- 広めた人物・背景:江戸時代の歌舞伎狂言作者(鶴屋南北など)
- 経緯:夏の歌舞伎興行において「恐怖で涼を得る」演出として怪談物が上演されたのが定着のきっかけである。
42. 夏祭り・縁日(屋台)
- 広めた人物・背景:古代の疫病退散祈願 / 江戸のテキヤ・商人
- 経緯:疫病が流行しやすい夏に神仏へ祈りを捧げる行事(祇園祭など)が起源で、参道に屋台が集まるお祭り文化へ発展した。
43. 水鉄砲
- 広めた人物・背景:江戸時代の子供たち・玩具商
- 経緯:竹筒に押し出し棒を差した自作玩具として江戸時代から親しまれ、現代でもプラスチック製等に形を変えて継承されている。
44. ラジオ体操
- 広めた人物・背景:逓信省簡易保険局(現日本郵政)およびNHK
- 経緯:1928年、国民の健康増進目的に開始され、昭和初期から夏休みに子どもが集まる地域行事として定着した。
45. キャンプ・海水浴
- 広めた人物・背景:松本順(初代陸軍軍医総監)
- 経緯:もとは「潮湯治」という医療・健康法であった。明治時代に大磯などに海水浴場が開設され、昭和のレジャーブームで定着した。
46. スイカ割り
- 広めた人物・背景:全国スイカ割推進協会(日本スイカ協会)
- 経緯:海岸での遊びとして自然発生的に行われていたものを、1980年代以降に各種団体が統一ルールなどを制定してレジャーとして認知を広めた。
47. 夏休みの宿題(絵日記・自由研究)
- 広めた人物・背景:明治時代の文部省(教育制度)
- 経緯:明治時代、暑さによる学習効率の低下を防ぐため長期休業が導入され、休暇中の学習習慣維持として宿題が提示されるようになった。
48. 川遊び・カヌー
- 広めた人物・背景:地域住民と近現代のアウトドア産業
- 経緯:古代からの涼む知恵が、昭和後半のアウトドアブームに伴ってアクティビティとして整備・定着した。
49. ナイトプール
- 広めた人物・背景:首都圏の高級ホテルおよびSNS文化
- 経緯:2010年代半ばから、日焼けを避けつつ映える空間を楽しむ若者向けイベントとして都市部ホテルを中心に急速に広まった。
50. クールビズ(Cool Biz)
- 広めた人物・背景:環境省(2005年提唱)
- 経緯:2005年に小池百合子環境大臣(当時)のもと、夏の省エネ・温室効果ガス削減を目的にノーネクタイ・ノー上着のスタイルとして官民挙げて定着させた。

