人は年齢を重ねると、「最近、物忘れが増えた」「人の名前がすぐに出てこない」と感じることがある。
脳の健康を維持するためには、運動や睡眠、知的活動などに加えて、毎日の食事も重要である。
特に、脳は大量の酸素と栄養を必要とする器官。そのため、脳そのものを支える栄養素だけでなく、血管や血流を健康に保つ食品も重要になる。
そこで今回は、抗酸化成分、良質な脂質、ビタミン・ミネラルなどの特徴を踏まえ、「脳の老化予防」という観点からおすすめしたい食品10種類を独自にランキングにした。
第1位 くるみ
今回、1位に選んだのは「くるみ」である。
くるみの大きな特徴は、ナッツ類の中でも特に α-リノレン酸(ALA)を多く含むこと。
α-リノレン酸はオメガ3系脂肪酸の一種で、体内で一部がEPAやDHAに変換される。DHAやEPAは魚に多く含まれることで知られているが、植物性食品からオメガ3系脂肪酸を摂取できる点で、くるみは貴重な存在である。
さらに、くるみにはポリフェノールやビタミンEなども含まれている。
MIND食でも「ナッツ類」は重要な食品として位置付けられており、脳の健康を考えるうえで取り入れやすい食品である。
ただし、ナッツはカロリーが高いため、食べれば食べるほど良いというものではない。間食として少量を取り入れるのがおすすめである。
おすすめ:無塩・素焼きのくるみ
第2位 サバ缶
2位はサバ缶。
サバの魅力は、なんといってもDHA・EPAなどのオメガ3系脂肪酸を摂取できることである。
魚を食べる習慣は、認知機能との関連が研究されており、NIHも魚を含む健康的な食事と認知機能との関係を紹介している。
しかもサバ缶なら、骨まで食べられる商品も多く、調理の手間もかからない。「魚を毎回調理するのは面倒」という人にとって、サバ缶は非常に便利な選択肢なのである。
ただし、缶詰は商品によって塩分量が異なる。脳の健康という観点では、余計な糖分や塩分が少ない食塩無添加・減塩タイプや水煮タイプを選ぶとよいだろう。
なお、「缶汁や煮汁に栄養成分が溶け出している」ことはあるが、汁を全部飲めば必ず脳に良い、という意味ではない。塩分量も考えて利用しよう。
第3位 ブルーベリー
3位はブルーベリー。
ブルーベリーの代表的な成分といえば、紫色の色素であるアントシアニンである。
アントシアニンを含む食品と認知機能については複数の研究が行われており、2024年の系統的レビューでは、アントシアニン摂取と記憶など一部の認知機能にプラスの影響がみられた研究がまとめられている。
ブルーベリーそのものについても、認知機能を調べた研究がある。ただし、研究によって結果は異なり、「ブルーベリーを食べれば認知症を防げる」とまで断定できるものではない。
それでも、果物の中から脳の健康を意識して選ぶなら、ブルーベリーは有力候補である。
ヨーグルトに加えたり、冷凍ブルーベリーを朝食に利用したりすると、手軽に取り入れられる。
第4位 ダークチョコレート
「チョコレートが脳に良い」と聞くと意外に感じるかもしれない。
ポイントは、砂糖や脂質ではなくカカオに含まれるフラバノールである。
カカオフラバノールには血管機能に関係する作用が研究されており、血管を適切に拡張させる働きなどが注目されている。
脳は血流の影響を受けやすい器官なので、血管を健康に保つことは脳の健康を考えるうえでも重要である。
ただし、「チョコレートなら何でもよい」というわけではない。選ぶなら、カカオ70%以上など高カカオタイプがおすすめである。
一方、高カカオチョコレートも食べ過ぎればカロリーの摂り過ぎにつながるので、少量を楽しむのが基本である。
第5位 卵
5位は卵である。
卵が注目される理由の一つがコリン。
コリンは神経伝達物質であるアセチルコリンの材料になる重要な栄養素で、記憶や学習など、脳や神経系の機能に関係している。
ただし、「卵を食べれば物忘れが治る」という単純な話ではない。
コリンの摂取量と認知機能との関連を示した研究がある一方、コリンのサプリメントなどが認知機能を改善するという証拠は十分ではなく、まだ研究が続いている段階である。
卵はコリンだけでなく、たんぱく質なども摂取できるため、栄養バランスのよい食品として普段の食事に取り入れたいところである。
第6位 納豆
日本人にとって身近な「脳活」食品が納豆である。
納豆に含まれるナットウキナーゼは、血液凝固や線溶系との関係が研究されている成分である。
実際、人を対象にした小規模な研究では、ナットウキナーゼ摂取後に線溶・凝固関連の指標に変化がみられている。
ただし、「ナットウキナーゼが脳の血栓を溶かして認知症を防ぐ」と断定するのは適切ではない。
比較的規模の大きいランダム化比較試験では、ナットウキナーゼのサプリメントを約3年間摂取しても、動脈硬化の進行などに有意な差は確認されなかったという。
それでも納豆には、発酵食品としての特徴や大豆由来のたんぱく質などがある。
「ナットウキナーゼだけを目的に食べる」のではなく、健康的な食品の一つとして取り入れるのがよいだろう。
第7位 トマト
トマトの代表的な成分がリコピンである。
リコピンはカロテノイドの一種で、抗酸化作用を持つ成分として知られている。
トマトは生で食べてもよいが、加熱によってリコピンの利用性が高まることが知られている。さらに、リコピンは脂溶性なので、オリーブオイルなどの油と組み合わせる食べ方も相性がよいだろう。
例えば、トマト+オリーブオイルというシンプルな組み合わせでもOK。
また、食塩無添加のトマトジュースを利用するのも便利である。
ただし、トマトだけで脳の老化を防げるわけではなく、野菜を日常的に摂る習慣の一環として取り入れるのがポイントである。
第8位 玉ねぎ
玉ねぎには、ポリフェノールの一種であるケルセチンが含まれている。
ケルセチンは抗酸化作用などが研究されている成分である。また、玉ねぎを切ったときに目が痛くなる原因として知られる硫黄化合物も含まれている。
玉ねぎはサラダ、炒め物、スープ、カレーなど非常に使いやすいのがメリット。
特に「何か特別な脳活食品を買う」のではなく、毎日の料理に自然に取り入れられる点は大きな魅力である。
なお、「玉ねぎを食べると血液がサラサラになり、脳梗塞を防げる」といった表現は過度な断定になる。食べすぎには注意しよう。
第9位 海苔
意外と見落とされがちなのが海苔である。
海苔にはさまざまな栄養素が含まれている。特にビタミンB群などを含むことから、栄養バランスを整える食品の一つとして利用できる。
ただし、「海苔のビタミンB12が傷ついた神経細胞を修復する」とまで言い切るのは適切ではない。
ビタミンB12は神経系の正常な機能に重要だが、食品を食べることで「傷ついた神経細胞が修復される」という単純な関係ではない。
それでも、ご飯に巻いたり、味噌汁に入れたり、サラダに加えたりと使いやすい食品である。
毎日の食事に少しずつ取り入れるという意味では優秀な存在である。
第10位 緑茶
最後は緑茶である。
緑茶にはカテキン、テアニン、カフェインなど、さまざまな成分が含まれている。
テアニンはリラックスや注意・認知機能との関連が研究されている成分で、カフェインには覚醒作用がある。そのため、仕事や勉強の合間に緑茶を飲むという習慣は、気分転換にもなりる。
ただし、緑茶を大量に飲めば飲むほど脳に良いというわけではない。
カフェインを含むため、夕方以降に飲むと睡眠に影響する人もいる。脳の健康を考えるなら、食品だけでなく質のよい睡眠を確保することも非常に重要である。
10食品のランキングをまとめると?
今回のランキングをまとめると、以下のようになった。
| 順位 | 食材 | 注目したいポイント |
|---|---|---|
| 🥇1位 | くるみ | α-リノレン酸・ポリフェノール・ビタミンE |
| 🥈2位 | サバ缶 | DHA・EPAなどのオメガ3系脂肪酸 |
| 🥉3位 | ブルーベリー | アントシアニン |
| 4位 | ダークチョコレート | カカオフラバノール |
| 5位 | 卵 | コリン・たんぱく質 |
| 6位 | 納豆 | 大豆由来の栄養素・ナットウキナーゼ |
| 7位 | トマト | リコピン |
| 8位 | 玉ねぎ | ケルセチンなどのポリフェノール |
| 9位 | 海苔 | ビタミン・ミネラルなど |
| 10位 | 緑茶 | カテキン・テアニン・カフェイン |
「1つだけ食べる」より組み合わせが重要
ここまで10種類をランキングしてきたが、タイトルに挙げた「老化予防」は、認知症などを食品だけで予防できるという意味ではない。
健康的な食生活の一部として、脳の健康維持に役立つ可能性がある食品であるということには注意してもらいたい。
実際には順位そのものよりも、いろいろな食品を組み合わせることのほうが重要なのである。
例えば朝食なら、
卵+納豆+海苔+緑茶
昼食なら、
サバ+トマト+玉ねぎ
間食なら、
くるみ+ブルーベリー+高カカオチョコレート
といった組み合わせもできる。
これは、脳に良いとされる食品を一つだけ大量に食べるのではなく、魚、ナッツ、野菜、ベリー類などを幅広く食べる考え方である。
実際、NIH(米国国立老化研究所)が紹介するMIND食も、ベリー類、ナッツ、魚、野菜、豆類などを組み合わせた食事パターンを重視している。
つまり、「脳に良い食品ランキング」の本当の答えは、上位の食品を毎日食べ続けることではなく、10種類を含めたバランスのよい食生活を長く続けることなのかもしれない。
食事に加えて、適度な運動、十分な睡眠、社会的な交流、知的活動なども含めて生活習慣全体を整えることが、脳の健康を考えるうえでは大切である。
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