心理学と脳科学の比較表
| 心理学 | 脳科学 | |
|---|---|---|
| 主な研究対象 | 心のメカニズムと行動(なぜその行動をとるか) | 脳の構造、神経細胞、脳内物質(どのように脳が機能するか) |
| アプローチ方法 | 行動観察、実験、質問紙、カウンセリング | fMRI(functional Magnetic Resonance Imaging:機能的磁気共鳴画像法)・脳波などの機器を用いた物理的な測定・可視化 |
| 目的の例 | カウンセリングによるトラウマの克服や、マーケティングへの応用 | 脳疾患の治療法開発や、脳機能の仕組み自体の解明 |
結論から言うと、上記のような違いとされている。
では、心理学と脳科学の領域でどちらでも扱われるようなテーマを2つ挙げてみよう。
#1 不安があると人間は脳のワーキングメモリが16.5%減少する
この事象は心理学か、脳科学か?
◎心理学のアプローチ
- 課題の正答率
- 反応時間
- 記憶できた数
などを使って測るため、
➡️ 行動データから能力を数値化している=心理学の手法である。
一方、
◎脳科学のアプローチ
脳科学はその「なぜ」を説明する。
- 前頭前野
→ ワーキングメモリの中枢。ストレスで働きが落ちる - 扁桃体
→ 不安で過剰に活性化し、注意資源を奪う - コルチゾール
→ ストレスホルモンが認知機能を妨げる
➡️ 脳のリソース配分が乱れることで、記憶容量が実質的に減る、と考える
超実践的な一冊『ムダがなくなり、すべてがうまくいく 本当の時間術』の引用。
著書の中で望月さんは、
不安を払拭(ふっしょく)するためには、思いっきり不安を書き出すクヨクヨタイムを1日9分間だけ設け、わざと不安になることをすすめている。
つまり、不安を明確化し、予防線を張ることが不安解消に向けての有効打なのだという。
#2 我々の脳は選択肢があればあるほど悩み、前に進められない
なぜ選択肢が多いと悩むのか?
これは主に次の3つの理由で説明される。
① 比較の負担が増える
選択肢が多いほど、脳はそれぞれを比較し続ける。
→ エネルギーを消耗して「もう決めたくない」となりやすい
② 「もっと良いものがあるかも」と思う
選択肢が多いと、「他にベストがあるかも」という不安が出てくる。
→ 決断後も後悔しやすい(いわゆる“決断疲れ”)
③ 責任が重く感じる
自分で選べる幅が広いほど、「間違えたら自分のせい」と感じやすい。
→ プレッシャーで動けなくなる
心理学者のバリー・シュワルツは、これを
「選択のパラドックス」
と呼んだ。
また、有名な実験では、ジャムの試食コーナーで
- 6種類 → よく売れる
- 24種類 → 興味は持たれるが買われにくい
という結果が出ている。
◎心理学のアプローチ
- 人はどう感じるか
- 満足度がどう変わるか
- 行動(買う・買わない)がどうなるか
➡️外から観察できる現象を扱う
◎脳科学のアプローチ
同じ現象を脳科学では・・
- 前頭前野:意思決定・比較・計画をつかさどる
- 線条体:報酬や価値判断をつかさどる
- 扁桃体:不安やストレスをつかさどる
➡️選択肢が増えるとこれらの領域の負荷が上がり、
「処理しきれない → 決められない」という状態になる、と考える。
まとめ
これら2つの事象について見てきたが、これらの事象は心理学で見つかり、脳科学で裏付けられている、と捉えるのが一番しっくりくるのではないだろうか。
- 現象の発見・説明 → 心理学が先行することが多い
- その原因の解明 → 脳科学が後から深掘りする
つまり、両者は同じ事象を扱っても、それぞれアプローチが「別」の学問ということである。