いなせ(鯔背)

という言葉の由来は、江戸時代の魚河岸(日本橋)で働いていた若者たちの「髪型」にある。

粋(いき)で勇み肌な様子を指すこの言葉には、実は「ボラ」という魚が深く関わっているのである。

いなせの由来

1. 語源は「ボラの背中」

江戸時代、日本橋の魚市場で働く威勢のいい若者の間で、「鯔背頭(いなせまげ)」という髪型が流行した。

  • 鯔(いな)とは、出世魚である「ボラ」の幼魚のことである。
  • この髪型(まげ)の結い方が、ボラの背中のように青黒く、シュッと平たくなっていたことから「いなせ」と呼ばれるようになった。

2. 「いなせ」の意味の変化

もともとは特定の髪型を指す言葉だったが、その髪型をしていた魚河岸の若者たちが、男気があって格好良く、江戸っ子らしい気風(きっぷ)の良さを持っていたため、次第に「若々しく粋なさま」を指す形容動詞として定着したのである。

「いなせ」と「粋(いき)」の違い

どちらも褒め言葉だが、ニュアンスが少し異なる。

言葉ニュアンス
いなせ男性的、威勢が良い、若々しい。 主に男性に対して使われる。
粋(いき)洗練されている、垢抜けている。 男女問わず、身なりや振る舞いに余裕がある。

サザンオールスターズの楽曲『いなせなロコ・モーション』などでも使われている通り、現代でも「ちょっと格好良くて、ノリが良い」というポジティブなイメージで使われ続けている。

一方、ラッツ&スター(シャネルズ)の名曲『め組の人』の歌詞のように、女性に対しても使われている例もある。

1983年にリリースされたこの曲は、粋な「江戸の火消し(め組)」のイメージと、当時の1980年代の都会的な雰囲気を掛け合わせた大ヒット曲である。

め組の人(作詞:麻生麗二(売野雅勇) / 作曲:井上大輔)

いなせだね 夏を連れてきた女(ひと)
渚まで 噂走るよ めッ!

涼しげな 目もとに どこか影がある
まぶしすぎる 太陽を ちょっと 隠して
誘われてる わけじゃない
なのに 心は 乱されてる 恋の罠
あぶないね

(サビ) いなせだね 夏を連れてきた女(ひと)
渚まで 噂走るよ めッ!
小粋だね 髪に飾った花びら
夜明けまで 踊り明かすよ めッ!

(※以下、2番・リフレインと続く)

歌詞の注目ポイント

ここには、「いなせ」という言葉が、冒頭のサビで非常に印象的に使われている。

  • 「いなせだね」 ここでは、夏の海に現れた女性の、媚びない格好良さや凛とした美しさを「いなせ」と表現してる。
  • 「めッ!」 決めポーズでおなじみのこのフレーズは、火消しの「め組」の「め」と、印象的な「目(アイメイク)」を掛けている。
タイトルとURLをコピーしました