認知症

「あの人なんて名前だったっけ?」「何をしようと思ってたんだっけ?」
誰しもこれらを経験したことはよくあるのではないだろうか。

単なるもの忘れであれば問題ないのだが、
脳の病気や障害によって日常生活に支障が出ている状態になると認知症、ということになってくる。

認知症の主な症状とは?

記憶力の低下:
新しい情報を覚えるのが難しくなる、物忘れが頻繁に起こる。

判断力や思考力の低下:
複雑な問題を解決するのが困難になる、日常的な決定に対する判断力が鈍る。

時間や場所の認識障害:
現在の年月日や自分がどこにいるかがわからなくなることがある。

言語の問題:
言葉が出てこない、会話を続けるのが難しくなる。

早期発見のサイン

もし身近な方に以下のような変化があれば、早めに専門医(物忘れ外来など)や地域包括支援センターに相談するのがベスト。

[ ] 同じ話を何度も繰り返すようになった。

[ ] 料理の味付けが変わった、段取りが悪くなった。

[ ] 身だしなみに無頓着になった。

[ ] 些細なことで怒りっぽくなった。

「単なる物忘れ」との見分け方

加齢による物忘れと認知症には、決定的な違いがある。

加齢によるもの:
体験の「一部」を忘れる(例:朝食の献立を忘れる)。

→ヒントがあれば思い出せる。

認知症:
体験の「すべて」を忘れる(例:朝食を食べたこと自体を忘れる)。

→ヒントがあっても思い出せない。

知っておきたい「4大認知症」

認知症と一口に言っても、原因によっていくつかのタイプに分かれる。

タイプ特徴主な症状
アルツハイマー型最も多く、全体の約7割。脳に特殊なタンパク質が溜まる。物忘れ(記憶障害)、道に迷う、時間や場所がわからなくなる。
脳血管性脳梗塞や脳出血などが原因。感情の起伏が激しくなる、歩行障害、できることとできないことの差が激しい。
レビー小体型脳に「レビー小体」という物質ができる。実際にはないものが見える(幻視)、手が震える、頭がはっきりしたりぼんやりしたりする。
前頭側頭型脳の前方(前頭葉など)が萎縮する。感情の抑制が効かなくなる、同じ行動を繰り返す、言葉が出にくくなる。

なぜ認知症患者は増加しているか

  1. 高齢者人口の急増(最大の要因)

分母の増加:

日本では団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に達し、認知症を発症しやすい年齢層の人口そのものが増えている。
また、2025年には65歳以上の高齢者の4人に1人が認知症になると言われており、これは高齢者の増加に直接関連している。

寿命の延び:

医療技術の進歩で他の病気が治るようになり、結果として「脳の寿命」が課題となる年齢まで長生きできる人が増えた。
85歳以上では約4割、90歳以上では約6割に認知症の症状が見られるというデータもある。

  1. 生活習慣病の広がり
    現代の食生活や運動不足による病気が、脳にダメージを与えている。

糖尿病・高血圧:
糖尿病の人は、そうでない人に比べてアルツハイマー型認知症になるリスクが約2倍高いという研究結果がある。

血管の老化:
高血圧や脂質異常症は、脳梗塞や脳出血を引き起こし「脳血管性認知症」の原因となる。

  1. 社会環境の変化(孤独と刺激の減少)
    脳は使わないと機能が低下するが、現代社会では脳への刺激が減りやすい環境がある。

社会的孤立:
核家族化や独居高齢者の増加により、人との会話や交流が減っている。孤独感は認知症のリスクを高める大きな要因の一つだ。

難聴の放置:
近年の研究で、「難聴」が認知症の最大の修正可能なリスクであると指摘されている。耳が聞こえにくいとコミュニケーションを避け、脳への刺激が激減してしまうためである。

  1. 「認知症」の認識の変化

以前は認知症の兆候が見られても、単なる「老化の一部」として扱われていたことが多かった。しかし現在は、認知症は病気であるという認識が広まり、診断が早期に行われるようになったことも、患者数増加の一因である。

認知症の治療薬

米国では新薬が認可された。

日本でも2025年頃から順次実用化が進行中である。

しかしこれらは3年ほど症状の進行を遅らせたり、精神症状を和らげたりすることが目的であり、現時点では完全な治療法は見つかっていない。

  1. 進行を遅らせる「新薬」(原因にアプローチ)

抗アミロイド抗体薬(例:レカネマブ/ドナネマブ)

1割、3割負担だとしても現在の価格だとかなり高額。
ほとんどの場合、高額医療費制度を使用することになる。


2026年8月より、高額療養費制度の自己負担限度額が段階的に引き上げられる予定であり、月々の負担が数千円〜数万円増える可能性がある。

また新薬(レカネマブ等)を使うためには、事前に「アミロイドPET検査」や「脳脊髄液検査」が必要。

PET検査の自己負担(3割):
約2万円 〜 5万円程度(保険適用時)

  1. 症状を和らげる「従来の薬」(症状にアプローチ)

以前からある「症状を和らげる薬(飲み薬・貼り薬)」がある。

ジェネリック医薬品(後発品):

  • 月々の自己負担(3割): 約1,000円 〜 3,000円程度

先発品(アリセプトなど):

  • 月々の自己負担(3割): 約1,500円 〜 6,000円程度

「予防」や「リスクを下げる生活習慣」

認知症の予防において、現代の医学で最も効果的と言われているのは「脳に良い刺激を与え、血管を守ること」

2020年のランセット委員会(世界的医学誌)の報告では、認知症のリスク要因の約40%は、生活習慣の改善で「予防または遅らせることが可能」とされている。
具体的なアクションを優先順位順にまとめた。

  1. 脳への刺激を絶やさない(社会性)
    意外かもしれないが、脳トレパズル以上に「人との交流」が大切だ。

孤立を避ける:
友人との会話、趣味のサークル、地域の活動などは、脳の広範囲を活性化させる。

難聴のケア:
耳が聞こえにくいと脳への情報が減り、萎縮が早まる。「最近聞き返しが増えたな」と思ったら、早めに補聴器を検討するのが非常に効果的な予防策だ。

  1. 「脳の血管」を守る(食事と運動)
    脳の健康は、血流の良さで決まる。

運動:
週3回、30分程度の有酸素運動

速歩き(ウォーキング)が最適。歩きながら「しりとり」をする、引き算をするなど、「運動+頭を使う(コグニサイズ)」を組み合わせるとさらに効果が上がる。

食事:
週に数回は青魚(DHA/EPA)を食べる。

シナモン・はちみつ・ターメリック・緑茶・マッシュルーム・カマンベールチーズなども。

抗酸化物質:
野菜、果物、大豆製品を積極的に。

減塩:
高血圧を防ぐことが、脳血管を守る最大の鍵。

  1. 質の良い睡眠
    脳は寝ている間に「アミロイドβ(認知症の原因物質)」を洗い流す掃除を行っている。

1日6〜7時間程度の睡眠を目指そう。

いびきが激しい場合は「睡眠時無呼吸症候群」の可能性があり、脳の酸素不足を招くため注意が必要だ。

習慣化のためのチェックリスト
まずは、以下のどれか一つから始めてみるのがおすすめ。

[ ] 1日20分、少し汗ばむ程度の早歩きをする

[ ] 定期的に歯医者に行く(歯周病は認知症リスクを高めます)

[ ] 1日1回以上、家族や友人と楽しく会話する

[ ] 料理や麻雀、楽器など、指先と頭を同時に使う趣味を持つ

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